プロマネ道場 教科書サンプル

このページはプロマネ道場で使用する教科書のサンプルページです。オンライン講座の際にはこちらの教科書を使用します。講座を申し込んだ方には、体裁を整えた pdf が配布されます。

 

0. 本書の目的 – プロジェクトマネジメントが必要な人は誰か

多くのプロジェクトマネージャーが置かれている現実とは

 

本書は私が仕事で関わっている方の「結局、プロジェクトマネージャーって何ができないといけないんですかね?」という一言から始まりました。

 

私はこの言葉を聞いて、「そういえばプロジェクトマネージャー(プロジェクトマネージャー/プロダクトマネージャー)がやらなければいけないことは世の中に共通理解があるようで無いな」ということに気づき、まずその場で必要なプロジェクトマネジメントのスキルセットを洗い出しました。そして、それを見直しながらブログ記事としてまとめて公開すると、数ヶ月後に大きくネットでバズり、スキルセットに関する知識のニーズの高さを感じて、それぞれのスキルの中身を説明する本書の執筆を始めたのでした。

 

 

例えば、プロジェクトをやることになってどんな知識やスキルが必要なのかと Goolge で検索してみると、 PMBOK® や ITSS, PRINCE2 といった知識体系を見つけることができます。この知識体系を実際に見ていただけると分かりますが、これらは基本的にプラントなどの大規模な工事や大規模システム開発を志向しており、また概念としてかなり抽象度が高いという特徴があります。そして、その知識を学ぶための研修や講座、書籍も多くが資格取得を想定しているため、そのまま自分の現場で活用できるケースは多くはないでしょう。

 

実際に業務を行う際はこうした知識を目の前のプロジェクトに沿って具体的な形に落とし込んで関係者と共有することが必要ですが、それを個人のレベルで実現するのは極めて困難であることに気づくでしょう。簡単に言うと、PMBOK などの知識体系はそれを知っていることを前提とできる環境ではとても有効に機能しますが、そうでない環境では適用がとても難しいのです。

 

実際にプロジェクトマネージャーとして効率的にプロジェクトを動かしていくには、立場やリテラシーの違う人々と関わりながら、プロジェクトに関する実践的な知識や理解を関係者に伝えていく必要があるのです

 

私は過去20年間、IT業界で50社以上(スタートアップから東証一部上場企業まで)、400件を超えるプロジェクト(Webサイトからアプリ、基幹システム、業務改善まで)に関わってきました。そこで関わるプロジェクトマネージャーの力量はまさに玉石混交で、名刺に「プロジェクトマネージャー」や「プロダクトマネージャー」、「スクラムマスター」と書かれていたり、また何かの資格を所持したりしている人でも、実際の現場で発揮されるスキルは保証されていないという現実に向き合ってきました。

 

少なくとも、日本で実施される一般的なプロジェクトでは PMBOK や ITSS を元に共通認識を整備するどころか、システムや Webサービスを0から1まで作り上げたことのない担当者が上司から呼ばれて「限られた予算で1年でクライアントのシステムを刷新する必要がある」とか、「社長の思いつきで何も決まっていないけど来期までに新規事業を立ち上げなければならない」と言われ、唐突に発生する大きなミッションと責任を背負わされるケースがかなり多いのです。

 

こうして始まったプロジェクトを時間と予算のプレッシャーの中で自身のスキルで何とかハンドリングしていかなければならないのが多くのプロジェクトマネージャーが置かれている立場です。

 

 

このように、多くのプロジェクトマネージャーが置かれたシチュエーションは過酷なものですが、その中で多くのプロジェクトを潜り抜けてきた第一線のシニアクラスの人達のスキルは非常に属人性の高い(その人でなければできない)ものとなっており、ジュニアクラスのプロジェクトマネージャーの育成はどの企業でも大きな課題になっています

 

2014年の IT人材白書によると、「新事業・新サービスを創出する人材」を「確保できている」と回答した企業はわずか 4.4% しかなかったのです。新規事業や DX など、高度なスキルが必要とされる今後、よりニーズと人材供給のギャップは広がっていくでしょう。

 

プロジェクトマネジメント/プロダクトマネジメントの部分部分のスキルについては世の中に多くの書籍が存在するものの、キャリアを進めていくために登る階段の「最初の段」が欠けているような状態で、社会的なニーズは高いにも関わらず全く足りていない状況であると言えるでしょう。

 

 

この問題を何とかしないと、企業の経済的発展はおろか、炎上プロジェクトを減らして昨今大きな問題になっている労働環境を改善することもままなりません。世の中から必要とされている人材のキャリア歩む上で多くの人がつまづく「最初の段」をご用意して、多くの方に必要なスキルと考え方を身につけて価値のあるプロジェクトをどんどん成功していただきたいというのが、私が本書をまとめた理由です

 

 

「プロジェクトマネジメントのノウハウ」が必要な人は誰か

 

本書は「プロジェクトマネージャー」と呼ばれている人やこれからプロジェクトマネージャーになろうとしている人を第一の対象として想定していますが、実はプロジェクトマネジメントの知識はこうした専門家だけが必要なわけではありません。

 

仕事で実施されるプロジェクトは多くの関係者が関わります。例えば、業務システムを導入するプロジェクトでは、意思決定をする組織の経営者やマネージャー、主管となる発注担当者やそのマネージャー、業務で関わる部署の担当者やマネージャー、開発を担当するベンダー(システム開発会社)のプロジェクトマネージャーやソフトウェアエンジニアやテスターやマネージャー、契約や請求に関わる営業担当者や法務担当者、経理担当者、採用担当者など、多くの立場の人々が関わることが通常です。連携するシステムがある場合などはこれが企業単位で増えていきます。少し大きめのプロジェクトでも、100人や200人もの人々が関わることは珍しくありません。これらの多くのポジションの一つでもうまく機能しないと、プロジェクトはスムースに進めることができないのです

 

 

もちろん、小さなスマホアプリを作る場合などは数人から始めることも可能です。その場合は気心の知れた間柄であれば明確な共通認識や方法論がなくてもうまく進めることができますが、アプリがヒットして事業化していけばすぐに関係者は数十人、数百人と増えて、その方法では通用しなくなるでしょう。

 

プロジェクトを成功させていくには関係者の協力が不可欠ですが、ここで「そもそもプロジェクトとはどういったものか」や「プロジェクトの進め方とはどうあるべきか」が共通認識として存在しているかが極めて重要な意味を持つのです

 

関わる人々がプロジェクトとはどういったものかを理解していないと、チームとして効率的にプロジェクトを進めることができません。例えば、システム開発では発注担当者が適切な実行力を持つベンダーを選定できなかったり、予算承認でつまづいたり、要件定義が不十分で完成した時に「コレジャナイ」と言われてしまったり、品質担保ができておらずシステムに障害が発生したり、契約面で揉め事が発生したりするのです。

 

つまり、プロジェクトについての知識や理解は、プロジェクトマネージャーに限らず、それに関わる人それぞれが持っているに越したことはないのです。また、昨今盛んに行われている新規事業や DX の取り組みように、IT が組織のあり方やビジネス全体に影響することが一般的になる今後は「常識」として必要なものになるでしょう

 

そのため、本書はプロジェクトマネジメントの初級者だけでなく、プロジェクトに関わる多くの人が理解できるよう、できるだけ平易な文章とイラストで基本的な考え方やテクニックをお伝えすることを目的としています。

 

本書の主な想定読者は下記の通りです。

  • ・今後キャリアとしてプロジェクトマネージャーを選択したいと考えている方
  • ・トップから新規事業や DX などのプロジェクトを任されて不安になっている担当者
  • ・見様見真似で何とか業務をこなしているプロジェクトマネージャー初級者
  • ・プロジェクトの遂行やプロジェクトマネージャーの評価に責任を持つ経営層・マネージャークラスの方
  • ・プロジェクトマネージャーの採用に関わる方
  • ・他の業務が主務でプロジェクトマネージャー業務を兼務している方
  • ・自分が関わっているプロジェクトが適切に運営されているかを確認したいプロジェクトメンバー

 

プロジェクトマネージャーのスキルレベル

 

本章でお伝えした通り、プロジェクトマネージャーのスキルレベルは玉石混交なのが現実です。スキルレベルと担当するプロジェクトがアンマッチの場合、プロジェクトの成功率が大幅に下がり、炎上してプロジェクトマネージャー自身やメンバーが鬱になったり、離職したり、関係する企業が経済的に損害を受けたり、それに伴って事業戦略が遅延するなどの大きなダメージを受ける可能性があります

 

プロジェクトマネージャーに憧れていたり、自己顕示欲が強い人は自分ができない/やったことがないことも「できる」と主張したりして、周囲を巻き込んで大きな失敗をしてしまうことがありますので、プロジェクトへのアサインは慎重に検討する必要があります。これは登山に例えると、未熟なガイドに依頼して無謀な登山に挑戦した結果、みんなが遭難してしまうようなものです

 

 

また、プロジェクトマネージャーとして大きすぎる負担を引き受けて身体を病んだり、ビジネス上の重要なプロジェクトで部下をアサインした際に失敗したりしないためにも、また習熟にかなり時間がかかるプロジェクトマネージャーを企業や社会で育成して増やしていくためにも、自分や担当者がどれくらいのスキルレベルがあるのかを適切に認識する必要があります。

 

プロジェクトマネージャーのスキルを冷静に分析するには、「具体的に自分(相手)が1人称でその業務を実施できるか/実施したことがあるか」を正確に把握することが必要です

 

プロジェクトマネジメントのスキルセットについては下記のスプレッドシートを無料で公開していますので、それを元に「できる/できない」や「得意/苦手」などの振り分けをしていくと良いでしょう。

 

 

もちろん、プロジェクトマネージャー1人が全ての領域を全て得意である必要はありません。その分野に詳しい人と協力して進めていければプロジェクトを成功させることは可能です。ただ、全体を俯瞰できる人は最低1人は必要になりますので、各領域でどんなことをやらなければならないかを知っておくことは必要でしょう。

 

企業の人事・育成担当の方は、各プロジェクトマネージャーにヒアリングしながらシートを記載していくと、育成や今後のアサイン方針を立てやすくなります。

 

プロジェクトマネジメントのスキルセット – Google スプレッドシート
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1g-3FcalOIh_kykSED_clwvBFPSQ78tpZZlErb6bZYSs/edit

 

プロジェクトのサイズ感については、概ね10人月、30人月、50人月、100人月という規模で複雑性が大きく変わりますので、誰がマネジメントするかによってサイズ感をコントロールすることも必要です。例えば、30人月のプロジェクトしかやったことがない人が100人月のプロジェクトをマネジメントする場合は、プロジェクトを細かくフェーズ分けしたり、事前にリスクや進め方のアドバイスをしてくれるシニアのサポートや、忙しさをカバーしてくれるジュニアクラスのプロジェクトマネージャーを補助としてつけたりするなどの工夫が必要になります。

 

 

しかし、自分の周りに経験豊富なシニアクラスのプロジェクトマネージャーがいないという場合もあるでしょう。そうしたプロジェクトマネージャーのために、本書では、私が20年かけて文字通り血と汗と涙を流しながら身につけてきたノウハウを出し惜しみせずご紹介しています。あなたが新しい価値や利益を生む素晴らしいプロジェクトを進める際、またはプロジェクトマネージャーとしての輝かしいキャリアを歩んで行く際には、ぜひ本書を手元に置いて、プロジェクトの「領域」と「サイズ感」を意識して読んでみてください

 

きっとトラブルを回避しながら素晴らしい成果を手に入れることができるでしょう。

 


 

あなたのプロジェクトマネジメントスキルを飛躍させるお手伝いをします

テキストのサンプル部分は以上ですが、いかがでしょうか。

 

テキストでお話した通り、日本ではプロジェクトマネジメントを求められるシーンは急増している一方で、仕事の中でプロジェクトマネジメントを適切に教えられるケースは多くはありません。プロジェクトは成功すれば多くの利益や新しい価値を生み出せますが、失敗すると炎上して経済的な損失だけでなく、関わる人が鬱や離職などの辛い現実に直面することも少なくありません。そこで、私達は少しでも多くの人がプロジェクトの成功を勝ち取ってもらえるよう、体系的かつ実践的なプロジェクトマネジメントの必要なノウハウをご提供できるようにしました。

 

その取り組みが、ここでご紹介した教科書とオンライン講座「プロマネ道場」です。プロマネ道場では、プロジェクトマネジメントで必要なノウハウを下記の12領域に分けて、経験が少ない方でも分かりやすくお伝えします

 

プロジェクトマネジメントの基本

  • 1. プロジェクトとは – 基本的な考え方を理解しよう
  • 2. 交渉 – 適切なパートナーシップを築こう
  • 3. タスクマネジメント – チームでパスワークをしよう

プロジェクトの各フェーズの基本ノウハウ

  • 4. プロジェクト計画- プロジェクトの筋道を立てよう
  • 5. 見積り- 正確な費用とスケジュールを共有する
  • 6. 契約 – 不利な契約を結ばないために
  • 7. 要件定義 – プロジェクトでやるべきことを決めよう
  • 8. デザイン – プロダクトの「顔」を作ろう
  • 9. 設計 – 中身がイケてるプロダクトを作ろう
  • 10. テスト – それは本当に「出来て」いるか
  • 11. リリース – プロダクトを世の中に送り出そう
  • 12. 保守改善・グロース – プロジェクトを成長させよう

オンライン講座では、これらの基本ノウハウの解説に加えて、書籍だけでは学びづらいプロジェクトマネージャーやリーダーとしての心構え、マインドセットについてお話します。質問コーナーもありますので、自分の業務でどう活かすかについて確認することもできます

さらに、Slack のコミュニティではニュースやノウハウ、案件紹介などを随時ご案内します。孤独になりやすいプロジェクトマネージャーをサポートします

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