先日、仕事で関わっている方から、「結局、プロマネって何ができないといけないんですかね?」という質問をされたので、その場でざっくり洗い出してみました。
世の中には PMBOK や ITSS, PRINCE2 などのスキル標準を定めたものはありますが、これらは大規模システム開発を志向しており、概念として抽象度が高いためベースの知識として利用できる環境は残念ながら非常に少ないという現実があります(もしこれらを利用できる環境にいるならとても幸せなことです)。
少なくとも日本で実施される一般的なプロジェクトは PMBOK や ITSS を元に共通認識を整備するどころか、「限られた予算で1年でクライアントのシステムを刷新する必要がある」とか、「社長の思いつきで何も決まっていないけど来期までに新規事業を立ち上げなければならない」といった唐突に発生するものがほとんどでしょう。
こうした目の前のプロジェクトを時間と予算のプレッシャーの中で自身のスキルで何とかハンドリングしていかなければならないのが多くのプロジェクトマネージャーが置かれている立場です。
そういった状況で多くのプロジェクトを潜り抜けてきた第一線の人達のスキルは非常に属人性の高いものとなっており、ジュニアクラスのプロジェクトマネージャー/プロダクトマネージャーの育成はどの企業でも大きな課題になっています。
いま必要とされている「プロジェクトマネジメントのスキルセット」は、より包括的かつ具体的で実践に繋がるものである必要があるでしょう。
そんなことを考えながらスキルを書いていくと、どんどん増えていったので半笑いになってしましましたが、現時点で11領域、項目は147もあります(笑)。細かく見ていくとまだ増えるかもしれません。
↓ リストはこちらで Google スプレッドシートで公開しています。再販等の商用利用以外はご自由に利用いただいてOKです。
プロジェクトマネジメントのスキルセット – Google ドライブ
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1g-3FcalOIh_kykSED_clwvBFPSQ78tpZZlErb6bZYSs/edit#gid=881657493
スキルセットの見方や運用方法、運用例についてはシートに記載していますが、この記事でも簡単にご紹介したいと思います。
リストの前提
「11領域147項目」という記載で圧倒された人もいると思いますが、もちろん一つのプロジェクトを成功させるのに全てを一人でやる必要はありません。
私はたくさんのプロジェクトマネージャー/プロダクトマネージャーと仕事をしてきましたが、それが可能な人材はおそらく1%以下でしょう。
また、現実のプロジェクトではスケジュールや予算上の制約もあり、通常「やるべきこと」を全てやれるケースも多くはありません。
なので、工作するときに作るものや目的に応じて工具箱から工具を選ぶように、スキルセットから「今回のプロジェクトの目的を達成するために必要なスキル」を選んで、それを誰がやるのかをプロジェクトの最初に決めることがとても大事です。
例えば、ツールを導入する業務改善のプロジェクトではスキルセットの領域のうち、システム開発に関わる設計や実装の部分は不要ですが、要件定義やテストはちゃんとしておいたほうがいいでしょう。
また、プロジェクトマネージャーは全てを統括していく立場なので「全くわからない領域」があると厳しいですが、自分で弱みを把握していればその部分は「人に訊くこと」や「人に手伝ってもらうこと」が大事です。
実際のところ、日々進歩する IT の技術を全て正確に把握するのは事実上不可能なので、「人に訊く」ことや「人に助けてもらう」のはプロジェクトマネージャーにとって不可欠なスキルでもあります。
リストの使い方
このリストはどんな立場でプロジェクトに関わるかによって、いろんな使い方をすることが可能です。立場ごとにオススメの使い方をご紹介します。
プロジェクトマネージャー(ジュニア/アシスタントクラス)
もしあなたが習熟中のプロジェクトマネージャーなら、自分の強みと弱みを把握した上で、どのスキルを伸ばしていくかと考えていくことが重要です。
リストを眺めてみて、得意な領域、苦手な領域、やりたい領域、人に頼りたい領域を明確にしておくことで、自分のキャリアの指針とすることができるでしょう。
実際のところ、多様なスキルと大きな責任が問われるプロジェクトマネージャーのキャリアの道のりは険しく長いものとなります。
途中で事故を起こしたり遭難したりしないよう、常に指針を持っておくことが大事です。
発注担当者
もしあなたが外部の企業にプロジェクトを発注する人なら、リストを使って発注先の担当者(プロジェクトマネージャー)が発注内容に沿ったプロジェクトマネジメントを出来ているかをチェックすることが大事です。
この必要性を認識している企業や発注担当者はあまり多くはありませんが、このチェックを怠ると、プロジェクトが大詰めになって引き返せない状態になってから「やっぱりできません」とか「追加費用が必要です」と言われる事態になる可能性があります。
有名企業で名刺に「プロジェクトマネージャー」という肩書が書いてあって会議やプレゼンでは優秀そうに振る舞う人でも、実際の業務はずさんで抜け漏れが多いケースというのは残念ながら日常的にあります。
こうしたリスクを回避するためにも、発注時に相手の企業が適切なスキルと経験を持ったプロジェクトマネージャーを配置できるかを確認する必要があるのです。
受注側としてはこうしたチェックをする発注者に対しては緊張感を持ちますが、「業務を分かってくれている」という信頼感を持つことにもなりますので、プロジェクトの成功率を大幅に上げることができます。
組織マネージャー(アサイン責任者)
もしあなたがプロジェクトマネージャーを案件にアサインする責任を持つ人なら、同様に個人のスキルの強みと弱みを把握した上でサポートすることでそのプロジェクトの成功が近づくでしょう。
また、案件の性質と比べてスキルに不安がある場合は誰をサポートに付ければよいかを判断することもできます。
サポートする人を適切に選ぶことができれば、そのプロジェクトの成功率が上げることができ、さらにアサインされたプロジェクトマネージャーは仕事を通じて大きく成長していくでしょう。
事業責任者・経営者
もしあなたがビジネス全体を統括する立場の人なら、自社の強みと弱みを判断するためにスキルセットで自社の人材の厚みを確認すると良いでしょう。
マネジメントできる人がいない領域の案件を受託してしまったり、自社サービスとして投資を行った場合、プロジェクトは失敗し、大きな損失に繋がる可能性があります。
自社の現状と今後の展望を踏まえて、今後どんな人材を増やしていくべきかを検討する際にスキルセットを使うと見落としを無くすことができます。
評価・教育責任者
もしあなたがプロジェクトマネージャーを評価する立場の人なら、こちらも同様に個人のスキルの強みと弱みを評価に結びつけることが可能です。
評価面談でも、このスキルセットを見ながら客観的に評価や今後の目標を話すことで、一方的な評価を避けることができます。
プロジェクトマネージャーの評価でよくあるのが、「できないこと」や「できなかったこと」を中心に批判的に評価して、「できていること」を評価しないケースです。
例えば、80点のプロジェクトマネージャーを「80点」として評価するか(加点方式)、「-20点」として評価するか(減点方式)の違いです。
プロジェクトは失敗が目立つ一方で、出来ていることについては地味で目立たないため減点方式で評価されることが多く、これは熱心なプロジェクトマネージャーほどモチベーションを下げることになり、メンタルヘルスの低下や離職を招くことになります(これはとてもよくあることです)。
また、プロジェクトマネージャーの間で組織から減点方式でしか評価されないことが認識されると、組織内で誰も新規事業などリスキーなプロジェクトをやりたがらなくなるでしょう。
フェアな評価をするためにも、またちゃんとリスクテイクできる組織を作っていくためにも、実績を評価する人がプロジェクトの結果だけでなく、そのために必要なスキルや実施した業務内容を評価できることが重要です。
採用責任者
もしあなたがプロジェクトマネージャーを採用する立場の人なら、スキルセットを見ながら、「自社のビジネスにとって必要なプロジェクトマネージャーはどんなスキルを持っているべきか」を検討しておくといいでしょう。
プロジェクトマネージャーの採用はとても難しいものですが、例えば「新規事業を1人称でゴリゴリ進められるプロジェクトマネージャーを採用したかったのだけど、前職の企業名や肩書に釣られて大規模プロジェクトの工数調整やステークホルダー調整の経験がメインの人物を採用してしまって、完全にアンマッチとなってしまった」というようなケースもよくあります。
プロジェクトマネージャーは報酬基準が高く採用機会も多くないため、こうしたアンマッチは事業進捗に大きく影響する可能性があります。
採用のアンマッチは、採用する企業と採用される人どちらにとっても良いことがないので、こうした事態を避けるためにも、スキルセットを使って自分達が必要としている人物像と応募してきた人がちゃんとフィットするかを確認することがとても大事です。
効率的なプロジェクトマネジメントを
今回の記事でご紹介した通り、実際にプロジェクトを成功させるために必要な業務は膨大にあります。
多くのプロジェクトでプロジェクトマネージャーの労力がボトルネックになってうまくチームが機能していないことがありますが、そうした状況を防ぐためにも、情報共有やマネジメントのコストをいかに減らすかがポイントとなります。
私達はそうした課題を解決するためのツールとしてマンモスプロジェクトを提供しています。ご試用は無料で使えますので、よろしければぜひお試しください。