正しい見積りのコツ
橋本:みなさんこんにちは。パラダイスウェアの橋本です。
中島:中島です。
古長谷;古長谷です。
橋本:だれプロラジオ第5回、今回のテーマは。
古長谷:見積りです。
見積りも大切なノウハウのひとつ
橋本:見積り。これもめちゃくちゃ大事なノウハウですね。デザイナーって見積り頼まれるの、工数?
中島:工数。あのですね、デザイナーって工数の話されるとすごい嫌な顔するんですよね。そういう人が多い。多いんですよ。淡々とやれば済む話ではなかったりするじゃないですか。
橋本:そうね。考える時間とかすごいあるもんね。
中島:そうなんですよ。だから出ないときは出ないしっていう感じなので、1行1行コードを書いていくって感じじゃないじゃないですか。方向性が決まっちゃえばこので ページをどんどん作っていくっていうのは読めるんですけど、なかなか見積り難しいところですよね。
橋本;そうですよね。古長谷さんも。
古長谷:私もちょっと近しいとこあって、工数で出せるものとそうじゃないクリエイティブな部分の見積りの出し方、結構2種類あるんですよ。
橋本:実はPMも一緒で、「要件を考えます、要件定義の資料作ります」っていうタスクがあったとして、本当に夜中の3時とかに考えたりもするのですよ。そのプロジェクトに没頭しているときは本当それこそ寝てるときも考えてたりとかするので。
中島:そういう状況出てきますよね。
プロとしての見積り
橋本:それを工数に落とせっていうのは実際のところ難しい作業ではあるんですよ。プロフェッショナルとしてある程度現場で、一線でずっとやっている人って、例えばこのタスクに対して何時間っていうのは難しいけど、1カ月あったら自分ができる仕事量って大体見えてると思うのね。
だから例えば要件定義を2カ月で終わらせるために、ある資料は20時間かかるけど、こっちは4時間でいけるとか、そういうパズルが自分の中で多分できると思います。中長期的な見方でいくと、パフォーマンスが自分の中でも分かってるし、期間でどれぐらいのことはできるかっていうのは、僕PMでいろんな人から見積り取るんだけど、キャリアが長かったりとか、専門性が高い人ほど安定してるんですね。
エンジニアとかだと、工数見積りって聞かれる頻度が高いっていうのもあるんだけど、すごい人は本当に誤差がない。それもクリエイティビティを問われるような設計が含まれていても誤差がないんですよね。そういうところがあって。
1個1個のタスクってどうしてもブレが発生するんだけど、それをじゃあ1カ月でどれぐらいのことができますかとか、このプロジェクトで2カ月入ってもらったら、ここ担当してもらえますか、みたいな話って、一定のレベルを出てればできるんですよね。
それを集めてきてプロジェクト全体で誰それさんとフロントエンドエンジニア、誰それさんがサーバーサイドエンジニア、中島さんがデザイナー、古長谷さんがマーケティング、みたいなので、例えば半年間。僕がPMで立ってやるとどれくらいのことができますよっていうのを、お客さんや会社の上司とかに提示して、それが最終的な見積りとして落とすと。
前回スケジュールの話があったんですけど、この工数全部まとめると、6カ月で5人動きますと。そうなると30人月必要なんだけど、じゃあそれをそのまま6カ月に落としていけるかっていうと、いけないんですよね。
それはなぜかっていうと、一人が全部100%、一カ月の間、月曜日から金曜日まで8時間、毎日そのプロジェクトに関われればそれでもいいんですけど、今の世の中そんなことないじゃないですか。掛け持ち掛け持ちでやってたりとかすることがよくあるので、「Aさんだったらこの仕事を1カ月でできるから、じゃあここはスケジュールも1カ月」ってやっちゃうと、実はこの人、ほかのプロジェクトやってるから50%しか入れませんってなると、もうその時点でスケジュール破綻しているみたいな。
古長谷:あるあるです。
見積りあるある
橋本:特に事業会社とかで新規事業をやる場合に、全然進まなくなっちゃう理由がそこで、主業務があって、副業務として新規事業をやってる場合。主業務が例えば0.8(80%)とかだと、この人の稼働って0.2(20%)なので、月に直すと4日だけですよ。4日で何ができるんだっていう話ですよね。
稀によくあるのが、「クライアントが新規事業やります。じゃあベンダーとして入ります」と。そして、要件定義フェーズでいろいろものを決めてもらわないといけないんだけど、主担当の人だったりとか、意思決定をする人が忙しいって言って、ズルズルズルズルいって、要件決まらないままスケジュールが伸びていって、そして、そのフェーズが終わったら、その頃のことをすっかり忘れて、「何でこのプロジェクト遅れてんだ」って怒られる、みたいな(笑)
そういうのがよくあるので、この人は月に何時間動けるのかっていうのはちゃんとカウントして想定しておかないと、プロジェクトって、スケジュールが完全に崩壊してしまうんですよね。だから見積りのときは、誰がその作業、業務(タスク)をやるのかっていう見積りをお互い確認しておく。
例えば「古長谷さん、今月って何%動ける?」とか、「来月は何%動ける?」っていうのをちゃんと聞いて、それをスケジュールに落として、6カ月掛ける5人で30人月なんだけど、スケジュールに落とすと、1年ぐらいかかりますとかっていうのは普通にあり得るんです。人を追加するともっとスケジュール短くできる可能性もあるけど 、この人が仕事できない人だと、追加するだけ無駄っていう。
中島:そうですね。意味ない。
橋本:結構その辺のノウハウも、世の中的には持ってない人多いので、そこでプロジェクトが破綻しやすいってのはありますね。
工数を考えてアサインしよう
中島:「気づけばこの期間、150%になってるな」っていうね。
橋本:その150%分をちゃんとお金払ってくれればいいんですけど。
中島;そうですね。
橋本:「いや、そんな予算は取ってない」とか言い始めると、もうここで揉めて、仕事にならなくなるので。でもすごくよくありますね。
中島:ありますね。昔っていうか、よくあったのがWebサイトとか、TwitterとかSNSプロモーションとかができはじめたときって、もともとパブリシティをやってる方がそっちで100%仕事あるのに、そこにオンしようとするっていうパターンがすごく多くて、片手間でTwitterプロモーションもやれみたいな。
今も多いんですけど、それって全然良い結果を生み出してなくて、いろんなとこがそういう話になっちゃってるんですけど、本来全然そうあるべきではないじゃないですか。しかも、Twitterとか全然やったことない人が採用されちゃったりとかして、すんごい悲惨な。
橋本&古長谷:(笑)
中島:悲惨ですよね。だってもともとああいうのって好きな人がやらないと全然愛がある感じになっていかないじゃないですか。
橋本:それに、普段やってないから、どういうものが炎上するかが分からなくて。
中島:温度間分かんないっていうね。
橋本:すごく大炎上するとか、よくある。
中島:ありますよね。ああいうプロモーションとかってお客さんが好きでフォローしてくれたりとか、拡散してくれたりとか、僕は愛がすごい大事だなと思ってて。
橋本:なんでもそうですよね。
中島:そうですよね。片手間にはできない仕事だっていうのを、まず上の人が分かっていないっていう、その見積り、その人が月どのぐらい働けるっていうことを考えずにオンしていくって本当に罪なことだよなっていうのは思いますね。
橋本:考え方としてそうだと思うんですけど、固定給しかもらったことがない人って、人が動くとその分お金発生するんですよっていうことをあんまり分かってなかったりするんですよね。ここで事業会社と外部の企業とかパートナーとの意識のずれやすいところで、固定給で、例えば発注担当者の人がサービス残業いっぱいやってるような人だと、「何だよお前、もっと頑張れよ」みたいな感じに、どうしても…中島さん、めっちゃブルーな顔してんじゃん(笑)
だけど、パートナーの人って、この仕事をサービスでやっちゃうと、ほかの仕事ができないので、それはどういうことかっていうと、単純に収入が減るっていうことなんですよね。相手の、仕事依頼してる人の生活を潰しているのと全くイコールなんだけど、そういうことにやっぱり気づきにくい。
指示の出し方を間違えて、ここを実はこうしてほしかったんです、みたいな話って、前々回ぐらいに話した、「おばちゃんカレー」、「やっぱりラーメン」と一緒で、2品分頼まないといけなんですよ。だけど、1品分、「いや、俺は1品しか食わないから」みたいなことを言われると、もうこの定食屋は潰れてしまうので。
ただ、ITではこういうのすごくよくある話なので、この辺知らないと本当にプロジェクトうまくいかないし、仕事をやってくれる人が逃げていくので。認識としてね、ちゃんと持っといたほうがいいかなって思う。
発注は正確に
中島:提案の引き出しっていうのとは別に、必要なかった「屍プロダクト」みたいなのが、みんな持ってるんですよ。
橋本:僕はそういうのすごく傷つくんですよ。もちろん「手直しお願いします」とか、「変更お願いします」とか、「やっぱり出してもらったものを見たら、A案、B案、C案でC案がいいです」みたいなのはありますけど。
中島:もちろんもちろん、全然いいんです。
橋本:いい加減な発注しておいて「出てきたものが思ってたのと違う」っていうやり方をしてると、もうね。それで、「違ったんだけどお金ちゃんとその分払います」は別にいいですよね。
中島:それはいいですよ。なんでもやりますよね。
橋本&古長谷:(爆笑)
古長谷:払ってくだされば。
中島:そういうお客さんも稀にいるんですよ。おまかせでお願いしますみたいな、クリエイティブ系だと。バババッと出して、「ああ、これ見たらちょっと違うな」みたいな感じになってきて、「うわうわヤバイヤバイヤバイ」ってなってくるじゃないですか。でもこの分しっかりお支払いするんで、それとは別にもう1回やってくださいみたいな。
橋本:お任せって、でもそういうことでしょ。だってシェフの気まぐれサラダが出てきて、「これ食いたいやつじゃなかった」って言って、「やっぱりこっちのグリーンサラダにしてくれる?」って言ったら2品分払わないといけないでしょ(笑)
中島:そうなんですよ。ただ、サラダに使った野菜が無駄になっちゃう、みたいなの見えにくいんですよね。
橋本:それにデザイナーで、「いやいやいや、やるんだったら金くださいよ」って言いづらいよね。
中島:言いづらいんですよね。
古長谷:言ってもらえないことが多いですよね。デザイナーさんが善意でA案、B案、2個作りましたっていう人がいて、そのときにお客さんが「いいね」って言ってテンション上がって、両方使いたいってなったときに、1個の値段しか払わないだろうってみなさん思うんですけど、私はそしたら両方使うので、両方分を費用にしましょうっていう風に提案するんですけど。
中島:すばらしい。
古長谷:交渉ってあんまりしてもらえないってよく言われますね。
中島:俺そのパターンはなかったですね。
時間を買うという考え方
橋本:やっぱりかかった時間に対してお金を払ってもらうのが一番フェアなんですよね。「ページ1枚」っていう発注だと、それができるって思っちゃう。でも「ページ3枚分デザインしてますよね」っていう話なんですよ。あと、固定給で働いてる人って時間単位でお金を払うのが失礼なんじゃないかと思ってる人も結構いて。
中島:逆に。
橋本:バイトみたいな。
中島:そっか、なるほど。
橋本:だけど、これも前に出した例えなんですけど、弁護士とかって時間単位とか、あとこの弁護士だと月々の顧問料で何時間までとかって相談時間が決まってたりとかするんで、契約の仕方はいろいろあるんですけど、専門性を持ったプロフェッショナルの時間を買うっていう考え方にしたほうが、ページを買うんじゃなくてね、そうしたほうが、認識のずれがなくなっていいですね。このあたりはまた契約の話で。
準委任契約と請負契約
簡単に言うと、時間に対してお金を払ってもらうのは「準委任契約」って言われるやつで、できた成果物に対してお金を払ってもらうのは「請負契約」です。請負契約はお客さんの指示が間違ってない考え方なんですよね。
だから請負契約のベースの考え方って、例えば家を造るときに設計書と、土地とか寸法が完全に決まっていて、「この設計書通りに造ってくださいね、何月何日までに」っていうやり方なんですよ。あと物を買うときとかね。「社用車が必要だからトヨタの何とかっていう車両を50台、何月何日までに納品してください」っていうのだと、注文内容に認識のずれって発生しにくいじゃないですか。
だけど、ウェブサイトのページ1枚いくらみたいなのって、クライアント側がこの色を使って、このワイヤーフレームで、エクセルがここからここまでどうなってて、どういう素材が入りますみたいのまで書いてくれればいいけど、そんな発注ってまずないじゃない。だから請負契約って専門家に仕事を依頼するときにはあんまり向いてないやり方だったりします。
まとめ
橋本:では、見積りの話。だから、準委任的に考えて、一定のクオリティを担保できるものを作る、こういうものを作りましょうっていったときに、これ5人ぐらい入ります。で、そうなると全体だと30人月なんだけど、誰それさんが0.5人月で、誰それさんは0.3人月で、誰それさんは100%ですみたいな感じでいくと、ならしたときにこういう計画になりますよね。そして「これがスケジュールのお尻です」という感じでやり取りをしていけば、大幅にずれることはないですね。
ここの中身の精度っていうのはあるんですけど、これはプロジェクトを進める中で調整もできるし、始まった途端にスケジュールが破綻してる、みたいなことはなくなると。そういうのいっぱいあるからね。
古長谷:そうですね。残念ながら。
橋本:開始時点で破綻してるプロジェクトってあるもんね。
中島:呼ばれた時点で燃えているっていうね。「近づくにつれて空が赤いなあ」みたいな。
橋本&中島&古長谷:(爆笑)
橋本:燃えてるなあって。
中島:夕方じゃないのに。
橋本:だから僕はプロジェクトのコンサルティングをやるとき、一番最初のプロジェクトの立てつけを確認するんですよ。そして「ここリスクあるよ」、「この見積りおかしいですよ」とか、「ここ人張らないと危ないですよ」とか、そういうサポートをやると焦げずに済むと。
古長谷:みんなそういう訊ける人いたらいいですよね。
中島:そうなんですよね。本当そうですね。
橋本:じゃあ、第5回、見積りの話でした。ありがとうございました。
中島:ありがとうございました。