ガントチャートはどういうツールなのか
橋本:はい。みなさんこんにちは。パラダイスウェアの橋本です。
中島:中島です。
古長谷:古長谷です。
橋本:だれプロラジオ第19回は。
古長谷:「ガントチャートは、なぜプロジェクトで使えないのか」です。
橋本:はい。使えないって言い切っちゃってましたね。
中島:言い切っちゃいましたね。
橋本:ガントチャートって、プロジェクト計画の必須ツールみたいな認識が世の中に多いと思うんですけど。
中島:多いですね。
橋本:ワークしないんですよ。ガントチャートでワークしてる事例ってほぼ見ないですね。うちの会社はプロジェクトマネジメントツールのマンモスプロジェクトを提供してて、それに一応ガントチャート入ってるんですけど。
中島:入ってますね。
橋本:これはお客さんがすごく「入れてくれ」っていう要望が強かったので。
中島:めちゃくちゃありましたね、本当に。
橋本:ガントチャートを別に敵視してるわけじゃないですよ。ちゃんと使えるのであればその使い方を編み出せばいいんですけど、デメリットのほうが圧倒的に大きいんですよね。それは何かっていうと、ガントチャート自体がわかりやすいんですよね、すごく。
中島:うん。パッと見ね。
橋本:スタートと終わりがあって分かりやすいんですけど、このわかりやすさが何よりのデメリットの原因なんです。そもそも、ガントチャートって100年前にできたツールなんですよ。
中島:えー。
古長谷:そんなに。
中島:そんなに歴史あったんですね。
橋本:第一次世界大戦が1914年とかだからその頃ですね。第一次世界大戦って、ちょっとエピソードトークになっちゃいますけど、第一次世界大戦で、例えばドイツ軍の戦車を開発しましたと。それで前線から砲弾を援護で打ってほしいって送るじゃないですか。どうやって連絡してたと思いますか?
古長谷:何ですか、そのなぞなぞ(笑)。
橋本:いや「それぐらい時代が違うんですよ」っていうエピソードトークです。知ってる?
中島:いや、わかんない、全然。狼煙?
橋本:お、狼煙。
古長谷:鏡でキラッキラッみたいな?
橋本:おお。いいですね。正解は伝書鳩。
中島:マジかよ。
古長谷:おー。
中島:鳩はどっか行っちゃうかもしんないじゃないですか。
橋本:でもそれが一番確実だったんでしょうね、色々試した結果が。鏡のキラキラだと天気悪いと使えないし。
中島:確かに。
橋本:狼煙だと。
中島:風吹いちゃったりとか?
古長谷:爆撃とかそういう煙と紛れちゃいますね。
中島:あ、そっかそっか。
橋本:伝書鳩。戦争中に伝書鳩を飛ばす時代に開発されたツールがガントチャートなんですよ。
中島:やば。
古長谷:それすごい(笑)。
中島:やば。
橋本:それがね、今の時代使えると思うほうがちょっとおかしいでしょ?
中島:確かに。
古長谷:確かに。
ガントチャートの副作用
橋本:ガントチャートはそういう古い時代のツールで、何が古いとダメかっていうと変化を適切に反映できないんです。
中島:そうですね。
橋本:実際のプロジェクトやっていても、もうこれめちゃくちゃあるあるなんですけど、プロジェクトの最初にガントチャートを作って「こういう日程で進めたいと思います」って出すじゃないですか。
中島:はい。
橋本:そのあと更新されなくて、「今の状態ってどうなんだっけ?」みたいなのが分からなくなるっていう。プロジェクト計画において最初の計画ってもちろん大事なんですけど、それより大事なのは変更管理をちゃんとやることなんですね。
中島:ああ、そうですね。
橋本:今日この状態になっています。「当初こうだったけど、今はこうなっています」っていうのが関係者全員に同じものが伝わらないとダメなんですよね。それをガントチャートでやるとすごく大変なんですよ。
もうなんかタスクの行を追加して、こことここの期間がこうで…とかってイチイチやってると、人数が多いプロジェクトの場合はそれ専用の人が必要になるぐらいめんどくさいし、その面倒くささを嫌がって仕事やっているとすごく細かいサブタスクとかって発生するでしょう。そのうち、ちゃんとマネジメントしなくなるんですよ。
中島:日程が遊びがちになっちゃうんですよね。
橋本:もうこのタスクの中で巻き取っていきましょう、とか。
中島:巻き取って。
古長谷:はいはいはい。
橋本:アサイン増やせばなんかそんな感じになってるでしょみたいなのってすごくあるんですよね。
中島:やばいやばいやばい。
古長谷:ありますね。
橋本:なんだけど、その中でクリティカルパスが実は通っていて、ここでちゃんとマネージされてない小さいタスクがちゃんと終わってないことで遅れていって、プロジェクト全体が引きずられていく。
中島:がくーん。
橋本:みたいな話はもうマネジメントやってるとめちゃくちゃあるんですよ。場合によってはなんかツールでガントチャート使ってるんだけど、お客さんに提示する用に別のシートを EXCEL で作って、みたいのとか。
中島:何やってるんだかわかんないですね、もう。
橋本:その事情は分かるんですよ。だけどマネジメント工数がものすごく使われている、そこで。
中島:そうですね。
橋本:だから「ガントチャートは基本、僕は使わない方がいいと思っています」というブログを4年前ぐらいに書いたらかなりバズって、結構読まれてる。
中島:1発目に全体の工程をパッと見てわかりやすいというのはあるんですよね、確かにね。
橋本:だけど、そのプロジェクト開始時点の見えてるタスクって全体の半分ぐらいだと思うんですよ、多分。
中島:そうですね。
橋本:後からいっぱいやんなきゃいけないことがバーッと出てきて、そこをマネジメントするのが本当は大事なのに、最初の出した計画で、例えば受託とかだと、もうお客さんはその計画通りに進むもんだと思い込んじゃうんですよ。
古長谷:そうなんですよね。
橋本:そこがまた副作用として大きくて。
中島:そうですね。「ガントチャートは見せないほうがいいし作んないほうがいいんだよね」っていう感じですか、割と。お客さんに。
橋本:僕はそうですね。僕はうちで提供しているプロジェクトマップのほうを出すんですよ。プロジェクトマップだと、例えば「要件定義ここで、全体のスケジュールはこうなってますけど、要件定義が全ての大元なので、ここを予定通り終わらせないとその後はいかないですよ」って。
中島:流れていかないよっていうね。
橋本:なんだけど、ガントチャートで出しちゃうと、何とかできる気になっちゃうんです。
中島:進んでいく気になっちゃう。
橋本:重要なタスクが予定が遅れていても「ここをこう切り詰めてやればいいじゃん」って話にすぐなっちゃうんで、そうじゃない流れだからみたいな。
中島:間違った認識になるんですよね。
橋本:そう。見せた相手もガントチャートってね、読み解くのがすごく大変なんですよ。
中島:そうですね。
橋本:で、そのプリントアウトで打ち出したやつをみんなでこうやって見るみたいな。
中島:うーん。
橋本:これもね、あんま意味がないですよね。
中島:そうですね。
ガントチャートで仕事をすると…
橋本:僕も最初のうちね、マンモスプロジェクト出来るまではガントチャート作ってた時期もあるんですけど、最初にガントチャート出された時点でみんな何を見るかというと、自分の名前が書いてあるタスクの締切しか見ないです。
中島:ああ、そうですね。
橋本:ガントチャートのデメリットで最大のものは「学生症候群」っていうのがあって、学生症候群って何かというと締め切りドリブンなんですよ。
だからその例えばガントチャートって期間でタスクを貼るでしょ? その中で例えば、タスクの期間が2週間あるんだけど工数は3人日で出してますってあると、その2週間の間の最初のほうで3人日やってくれれば後続タスクを早めに開始できたりするんだけど。
中島:そうですよね。
橋本:普通は最後の3日でやるんです。これはもうほとんどの人がそうですね。9割ぐらいの人が締め切りに向けて仕事をします。3人日の見積もりが間違ってなければいいんですよ、それでも。だけど、大体4日かかっちゃいました、みたいなことになる。
中島:そうですよ。
橋本:あるいは期間中に「風邪引いちゃいました」みたいな話とかが入ってくると、もうどんどんどんどんバッファがなくなっていくんですね、プロジェクトの。
中島:「3日前から仕事するな!」って話ですけどね。
橋本:って言うけど、でもそうなるんですよ。ガントチャートをみんなに見せると。
古長谷:今出されれば私も期間の後半でやるかもかもしれないです。
橋本:それはしょうがないところがあって、今はみんな兼務で仕事するじゃないですか。フリーランスもいくつか案件抱えていて、その中でタスクをさばいていかなきゃいけないとなると、どうしてもタスクの締め切りがいつなのかっていうのは意識するんですけど、全部が全部それだとダメなんですよ。リスクじゃなくて遅延で全部バッファが食われていくので。
中島:それはやばいやばいやばい。
橋本:僕はマンモスプロジェクトを使っているんで、並行で回してるプロジェクトすごく多いでしょ?
中島:うんうん。
橋本:それも全部納期とかちゃんと守ってるからね。それはそのクリティカルパスで先出しできるタスクは先にやってるからそういうことができるわけで、ガントチャートでやると本当に遅れる理由しか生まないんですよ。
こういう話をすると、「ガントチャートでもクリティカルパス書けるじゃん」っていう人いるんですけど、でもガントチャートで見えてるのは期間だから。
中島:ああ。
橋本:クリティカルパスベースでプロジェクトマップを見せると、ボトルネックになるクリティカルパスに該当するタスクをみんな頑張ってやってくれるんですよ。
中島:おお。まあそうですよね。
橋本:「俺が頑張ればこのプロジェクトは早く終わるんだ」って思えるから。
中島:そうですね。後ろにどんな人たちが待ってるっていうのも見えるから。
橋本:そうそうそう。待ちがめっちゃ並んでる。
中島:なんかいい意味でのプレッシャーにもなるし。
古長谷:チームワークですね。
中島:そうそうそう。チームワークね。
橋本:そこがね、全然違うんですよね。だからマンモスプロジェクトのプロジェクトマップが生まれたのは2012年かな。
中島:2012年ぐらいでしたっけね。
橋本:だから最新のツールを使いましょうと。
中島:そうですね。100年のツールは厳しいですね。
橋本:100年前のツールを使うよりは。
中島:だからあれですか。本当は閉じたいですか? ガントチャート機能。
橋本:いや、今どの地点にいます、はわかりやすいと思うので、例えばね、「今は中間地点にいます、残工程こんぐらいで」みたいな話をするのはいいと思うんです。中間くらいまで来てれば、見えてるタスクとかは結構洗い出せてると思うので、「あとは工数どれぐらいあるの」みたいな話とかはしやすいので。
中島:なるほど。
橋本:その共有資料としてはいいと思うけど、それで計画を立てるっていうのはやめたほうがいい。
中島:なるほど、なるほど、なるほどね。
橋本:そうなんですよ。なんかガントチャート知名度がある分ディスってると思われるんですけどね、いや、上手く回らないからやめたほうがいいっていうシンプルな理由です。
中島:そうですね。まあ利点もあるよと。
橋本:だから共有としてならね。
中島:共有としては。ただそれをメインでプロジェクト回そうとするのは危険なことがいっぱいあるよ。
橋本:回すときに使うと大変でしょうね。
中島:大変ですよね。
橋本:ということで第19回は「ガントチャートはなぜプロジェクトで使えないのか」ですね。終わりたいと思います。ありがとうございました。
中島:ありがとうございました。