こんにちは、パラダイスウェアの橋本です。
「誰も教えてくれないプロマネのコツ」シリーズ、第4弾の記事です。
前回の記事を友人に見せたところ、「要件定義の座組が大事なのは分かったから、具体的な進め方を教えてくれ! ちょうど今、新しいプロジェクト始まって困ってるんだ!」と言われたので、その内容をお伝えします!
今回は私が18年間、300以上のプロジェクトを担当する中で培ってきた要件定義のノウハウをズバッと大公開してしまいます。
「そんなに手の内を見せちゃっていいのか?」という内容になりますが(笑)、要件定義のツボを押さえてどんどんプロジェクトを成功させちゃってください。
大公開! プロジェクトの難関「要件定義」をクリアできる進め方の5つのポイント
さて、前回の記事では「要件定義を成功させるには十分な工程を取って、初めから専門家の知見を入れて検討し、要件をとことん切り詰めて、チーム全体で進めることが大事」というお話をしました。
その体制を作ることができたら、後は必要なタスクを効率的に実施して、プロジェクトの実施に必要な要件を詰めていくことがポイントとなります。
では、その際に重要な考え方と進め方をお伝えします。
- ビジュアル化(見える化)した資料を元に進める
- 必要なドキュメントを選択する
- 効率のいい合意形成を行う
- 実行チームの部隊編成を行う
- 実行チームに要件の過不足がないかを確認する
この5つのポイントをうまく実施できれば、要件定義は成功できるでしょう。
そして、要件定義をうまく実施できればプロジェクトの成功はかなりの部分が保証されます。
要件定義はプロジェクトマネージャーにとってかなりストレスフルで忙しいフェーズになりますが、頑張っていきましょう。
まずこの記事では「1. ビジュアル化(見える化)した資料を元に進める」についてご説明します。
1. ビジュアル化(見える化)した資料を元に進める
まず最初に要件定義で必要なのは「ビジュアル化(見える化)した資料を元に進める」です。
はい、言ってみれば当たり前のことですが、資料を作るのはめんどくさいですよね。私も好きな作業ではないです(笑)。
しかし、資料はプロジェクト関係者の合意形成の土台になる、とても重要な資産です。
ここで手を抜くと、後で必ず大失敗してしまいます。
私が見てきたプロジェクトでも、炎上や失敗してしまうプロジェクトのほとんどがこの要件定義資料が適切に作られていませんでした。
仮にそれっぽい資料があっても、合意形成の土台になっていなければ意味がありません。
では、「なぜ要件定義ではビジュアル化した資料を作ることが大事なのか?」をお伝えすると、下記の2点が大きく関わっています。
- A. 人間は物事を忘れるし気が変わる
- B. 全体よりも細部に意識が行ってしまう
あるあるを回避していこう
A. 人間は物事を忘れるし気が変わる
A の「人間は物事を忘れるし気が変わる」については、「えっ、何だそんなこと?」と思う人がいるかもしれませんが、これはとても重要なポイントです。
いずれタスクマネジメントのところでもお話しますが、不確実な現実と戦うプロジェクトでは、この人間の特性を把握して対応することが大事です。
特にプロジェクト最初期の要件定義フェーズでは「まだ何もない状況で、後々の工程や実際のアプリやシステムに大きな影響を与える判断をしないといけない」という難しい問題があります。
また、アプリやシステム開発のプロジェクトでは短期間に数千万円や数億円、もしくはそれ以上の予算が動くことが通常で、責任の重さも通常の業務と比べて大きくなりがちです。
これをミーティングなどで「誰々が何々を決定した」という責任者の言質を取る形で進めてしまうと、責任回避の心理が働いて、「いつまで経っても物事が決まらない」とか「肝心のポイントがあやふやなまま進む」という、よくある要件定義の失敗に繋がってしまいます。
そして、これをそのまま放置しておくと、プロジェクトが進んで状況が変わったときに判断が変わり、要件変更や仕様変更に繋がってプロジェクトが大混乱するという悲惨な事態にもなりかねません。
また、「役職的にはシステムの要件を判断する立場にあるけど、実は IT には全然詳しくない」という人(日本企業ではむしろこれが普通です…)の判断を要件としてしまうと、要件定義に失敗してプロジェクト自体が失敗することにもなってしまいます。
これらの問題を回避するという意味でも、要件定義の際にプロジェクトリーダーは個人ではなくチーム全体の合意形成の土台として資料をまとめていくことがとても大事なポイントになります。
この際にビジュアル化した資料でわかりやすくまとめてあると、プロジェクトが進んだ後でも「なぜこの判断に至ったのか」の経緯を簡単に振り返ることができるため、混乱の予防策としてとても有効です。
詳細を詰めるやり方は進めにくい
資料をビジュアル化するときに重要なポイントになるのは、「関係者に理解しやすい形でまとめる」というところです。
例えば、業務フローやユースケース図などをまとめる際に、UML などの「正しい書き方」があることが多いですが、こうした正しい書き方で作成された資料はリテラシーを必要とするため、非専門家が理解しにくいという状態を生み出してしまうことにも繋がります。
よくあるパターンとしては、「優秀な若者が正しい書き方で資料をまとめていて、判断ポイントにも触れられているけど偉い人がそれを読み取れずに流されてしまい、後で要件がひっくり返ってしまった」という事例を見かけます。
資料はあくまでも関係者の合意形成を行うための土台となるものなので、「正しい書き方」にはこだわらず、それらを理解した上で関係者のリテラシーや専門性のバックグラウンドを理解した上で「分かりやすい形」に落としていくよう意識することが良い結果につながります。
ビジュアル化して判断ポイントをまとめていく
B. 全体よりも細部に意識が行ってしまう
B の「全体よりも細部に意識が行ってしまう」という要件定義でありがちな問題も資料をビジュアル化することで回避できます。
プロジェクトや新規事業の経験が少ない人が意思決定者にいる場合、要件定義の際に「今はまだそこに時間を割くべきではない」という部分に議論や意見が集中してしまうことがしばしば起こります。
よくあるパターンは、誰でも理解しやすいアプリケーションの機能やデザインに議論が集中した結果、システムアーキテクチャやユースケースの検討が進まず、実装の際に遅延や混乱を発生させて失敗してしまうケースです。
プロジェクトで一番貴重な資源は時間なので、重要度の低い細部に議論が集中してしまうと、時間切れになって重要な要件が詰められないままプロジェクトが進んでしまい、失敗の原因になってしまいます。
テキストで長々と文章化されていたり、行が連なっているスプレッドシートよりもビジュアル化した資料が優れている点は、「全体と部分の関係性」が分かりやすいところです。
あらかじめ検討しなければならない要件の全体像を示した上で、「今はここを議論していて、プロジェクトチームとしてこの部分の判断を意思決定しないと次に進めません」と資料で示しておいて、さらにミーティングなどでアジェンダ(議題)として設定しておくことで、こうした事態を防ぐことができるのです。
決めなければいけない部分を明示する
要件定義をうまく成功させるには
ここまでのお話をまとめると、要件定義では「人間は物事を忘れるし気が変わる」や「全体よりも細部に意識が行ってしまう」というよくある問題をカバーするために、「ビジュアル化した資料を作成して合意を形成すること」が大事ということになります。
では、具体的にどんな資料を作成すればいいのか?
次回は要件定義でよく作成する資料とその選び方についてお話しします。
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